今から20年ほど前、愛犬を連れての旅行は難しい時代でした。
旅行中は動物病院やトリミングサロンなどの【ペットホテル】に預けていくのが一般的でした。
2000年代になり、【ペット】から【家族】へと世間の考え方が徐々に変わってきます。
少子化が進み、愛犬や愛猫などのペットが【子供】【孫】のような近しい存在になったことが理由だと思われます。
また、それまでは宿泊施設を探すのは主に「ホテル・旅館ガイド」といわれる、ホテルや旅館が多数掲載されている専門のガイドブック等でした。
しかし、2000年代にどんどんインターネットやSNSが普及し、ネット上で宿泊場所を探すことができるようになり、今まではガイドブックに掲載してもらうための広告費を捻出できなかった宿泊施設も、広告費に比べて少額でHPを公開できるため、積極的に宣伝・アピールできるようになりました。
このような飼い主側の事情、宿泊施設側の事情が合わさって、愛犬との旅行が急速に増えてきたのです。
この記事では、ペット…特に犬を飼っている方にとって悩ましい、おでかけや旅行の時に、愛犬をどうするかについて、犬と関わる仕事に携わる私なりの見解をお伝えしていきます。
犬を我が家に迎え入れたということ
昔は、外飼いの犬がほとんどでした。
犬は「獣」「動物」なので、人間が暮らしている家の中に上げないことが常識の時代でした。
でも、先ほど冒頭でお伝えしたとおり、今やペットは【家族の一員】【子供や孫のような存在】に変化しています。
そういった理由で、日帰りのおでかけや泊りがけの旅行に愛犬を連れて行く飼い主さんが多くなりました。
ペット同伴で入館・入園できるテーマパークや、愛犬同伴で食事ができるレストランも観光地では多く見かけるようになりましたよね。
愛犬とのおでかけや旅行が当たり前の時代とも言えます。
とはいえ、インターネットを使わないご年配の世代をはじめ、初めて犬を迎え入れた飼い主さんの中にも【旅行にはペットを連れて行かない】ことが常識だと思っている方がいらっしゃるのも現状です。
以前、キャンプ場で挨拶を交わした犬連れの方に、こんな風に言われました。
たまには旅館にも泊まりたいんだけど、犬がいるから泊まれないでしょ?だから、どうしても犬連れだとキャンプになっちゃうんですよね
こんなにも愛犬と泊まれるホテルや旅館・ペンションがたくさんあるのに、それを知らなくて「キャンプしかない」とおっしゃったんですね。
でもまだ、ワンコを連れてキャンプをしているのですから良いと思います。
「犬がいるから出掛けられない」
「旅行に行くから、犬は預けていく」
という方も多いですから。
犬を家族の一員として迎え入れたということは、家族の一員として考えなければいけません。
自分の都合で、大切な子供や孫だけを旅行に連れて行かずに、置いていきますか?預けていきますか?
愛犬を動物病院やペットホテルに預ける覚悟
私は動物病院で「トリマー兼動物看護士」として働いていました。
学生時代はトリミングサロンにインターンにも行きました。
動物病院とトリミングサロンの『ペットホテル・預かり』を知る私は、自分の愛犬を預けようとは思いません。
主にペットホテルは下の写真のような犬舎に入れてお預かりをします。この中にペットシーツ(トイレ)とフード・お水を一緒に入れて、狭い中で愛犬が過ごすことになります。
ただ、数年前からフリースペースで預かるペットホテルも少しずつ増えてきました。
「ケージレスでのお預かり」
「フリースペースでのお預かり」
といったものですね。
でも、昼間はフリーで遊ばせていても、夜は犬舎に入れてしまうペットホテルも多いのが実情です(犬舎に入れることを飼い主さんにあえて言わないところも多々あります)。
また、動物病院では100%、上の写真のような犬舎でのお預かりです。
そして、お散歩に連れて行かない病院も多くあります。
1泊ならまだいいかもしれませんが、これが何日も続いたら…ご自身の可愛い愛犬が狭い犬舎でお散歩も行けずに何日も飼い主さんと離れて過ごすと考えたら…どうでしょうか。
動物病院の犬舎の中では、『出して!』と訴えるようにずっと吠えているワンちゃん、脱出しようと暴れて犬舎の壁や扉にガンガン体を打ち付けるワンちゃんもいます。
それを目の当たりにするたびに、「出してあげられなくてごめんね…」と心から謝りました。涙が出る思いでした。
インターンで行った、ペットホテルもしているトリミングサロン数軒では、お預かり中はお散歩に連れて行く飼い主さんには高騰や書面で伝えていたにも関わらず、実際にはお店の前で糞尿だけさせてすぐにケージに戻していました(忙しいから時間がないという理由です)。
動物病院やペットサロンなどのペットホテルを利用するのがいけないと言っているのではありません。冠婚葬祭など愛犬を連れて行けない場合、とても有り難いサービスだとも思っています。
でも、先ほどお伝えしたように、狭い犬舎に入れられてパニックを起こすワンちゃんも少なくはありません。パニックを起こさなくても、いつもとは違う状況に、犬舎の一番奥の壁にくっついて丸くなって静かに震えている子もいます。
あなたの愛犬はどのような性格ですか?
飼い主さんと離れても大丈夫?
怖がりさんではないですか?
いつもと違う環境でご飯が食べられる子ですか?
お散歩大好き?
狭い犬舎に24時間・48時間・72時間いてもストレスを感じない強い子ですか?
あなたは、かわいい愛犬が犬舎で過ごす様子を見たことがありますか?
あなたが犬の立場だったら、その状況に耐えられますか?
飼い主には「預ける」という【覚悟】が必要です。
自分都合で物事を考えていないか、愛犬はどう感じるか(飼い主さんが大好きで、いつもべったりなワンちゃんは特に)、今一度よく考えてから「預ける」という選択をしてください。
愛犬を家に置いていく、お留守番させる
これは、犬に関しては絶対にしないでください。
猫の場合は、十分な量のごはんとお水、トイレも複数用意すれば1泊~2泊程度であればお留守番できる子も多いです(させてはダメですが)。
対して、犬の場合。
いつも食べているのがドライフードだけであっても、大量に用意してお留守番させるのは危険です。
猫は長い時間をかけてご飯を食べるので、朝あげたご飯をそのまま夕方まで置いておいても大丈夫なのですが、犬の場合はお腹がすいていれば、あるだけ食べてしまいます。
もし2日分のごはんを別々のお皿に入れて置いておいても、1回で全部食べてしまうことも考えられます。
一度に大量にご飯を食べることにより、消化不良を起こして吐いてしまったり、消化・吸収できずに下痢になったりもします。
また、早い段階でご飯を全部平らげてしまったら、そのあとお腹がすいているのに食べるものがなくて、キッチンを漁ったり問題行動をしてしまうことも考えられるんですね。
さらには、お外でしかおしっこ・うんちが出来ない子もいますし、家の中でトイレが出来る子でも、お留守番のストレスによって食糞(自分のうんちを食べてしまうこと)をしたり、極度のストレスがかかると、自分の体の毛をむしってしまう子もいます。
朝ごはんをあげて、夕方のごはんの時間に帰ってくるのであれば(いつもの飼い主さんのお仕事中のお留守番のように)家でお留守番もできると思いますが、泊まりの旅行でワンちゃんに家でお留守番をさせるのは、絶対に絶対にやめてください。
旅行に愛犬を連れて行くのが当たり前になってほしい
私は、日帰りで遊びに行くのも、旅行に行くのも、キャンプに行くのも、すべて愛犬を連れて行きます。
愛犬と一緒に行けるところを選びます。
よく「犬がいるから、どこにも行けない」と文句や愚痴を言う人がいますが、その「犬」を飼ったのはご自身です。犬に限らず、動物を我が家に迎え入れるということは、そういうリスクも覚悟するべきなんです。
でも、私はもう10年以上、どこへ旅行へ行くにも愛犬を連れていますが、不便を感じたことはないです。
もちろん「ペット同伴禁止」の観光スポットやレストランなども多くありますが、そういうところを選ばなければ良いだけですし、どうしてもペット同伴不可の観光地を見たい時は、観光している間の1時間ほどだけ、その近所で時間預かりをしてくれるペットホテルや犬の幼稚園などに預けるという選択肢もありますよ^ ^
時間預かりをしてくれるペットホテルでも、フリースペースで預かってくれるお店を選ぶと、ワンちゃんのストレスも少なくてすみますね。
ここ10年ほどペットブームが続いているので、観光地もどんどん【ペット同伴可】が増えています。
ペットと泊まれるお宿も【犬連れ専門】のホテルやペンションが多数ありますし(特に東日本は本当にたくさんの犬連れ専用宿があります)、どのお宿も日々努力してくださっているおかげで、本当に快適に過ごせて、食事も美味しく飼い主にも愛犬にも優しいところばかりです。
温泉があるところも多いですし、小さなペンションであれば、オーナーさんとアットホームに会話ができますし、犬連れ専門の高級旅館や高級ホテルだってあります。
探せばいくらでもありますし、私もどんどん情報発信していこうと思っていますので、ぜひおでかけや旅行を愛犬と一緒に楽しんでほしいと思います。
平日は飼い主さんがお仕事で、ワンちゃんはおうちでお留守番。
休日は飼い主さんは遊びに行っちゃって、ワンちゃんはおうちやペットホテルでお留守番。
それでは、せっかく家族なのにかわいそうですよね。
大好きな飼い主さんと一緒に色々な場所で、嬉しい楽しい刺激をもらうことがワンちゃんにとっても気分転換やストレス発散、心と体の健康に繋がります。
お宿やキャンプ場、観光施設から「狂犬病予防接種」「混合ワクチン接種」証明書の提示を求められることもありますので、証明書・狂犬病注射済票はおでかけに必ず持って行きましょう。
狂犬病予防接種については「狂犬病予防接種を受ける時期や料金は?忘れたらどうなる?」、混合ワクチン接種については「犬のワクチンは6種混合?それとも9種混合にする?何を基準に決めたらいいのか、アレルギー反応は大丈夫なのか、動物看護士が分かりやすくお伝えします」それぞれの記事で解説していますので、参考にしてくださいね。
ぜひ、お休みの日は一緒におでかけして遊んで、3連休やGW・お盆・年末年始の大型連休には、ワンちゃんも一緒に旅行を楽しんでくださいね^ ^